I. 専門分野

言語類型論、日韓対照言語学、意味論、語用論、文法化、歴史言語学、言語接触
言語の類型と認知の類型、認知・機能言語学、認知類型論、応用認知言語学
言語の談話・語用論的基盤、複文(補文、関係節、副詞節)、名詞化、モダリティ

II. 指導可能な研究分野

以下の分野において修士課程、博士課程、あるいは論文博士の研究指導が可能です。関心のある方はまずhorieling(at)gmail.comにご連絡ください。

(i) 日本語と他言語の言語類型論的・対照言語学的研究(日韓, 日中語, 日本語と他のアジア言語(北アジア, 東アジア, 東南アジア, 南アジア, 中央アジア), 日英語, 日本語と他のヨーロッパ言語, 日本語とアフリカ言語との対比),

(ii) 日本語あるいは上記の言語を対象とする認知言語学・機能主義的言語学的研究 語用論, 談話と文法(Discourse and Grammar), 歴史言語学・文法化研究・言語接 触

(iii) 日本語教育, 英語教育, 他の外国語教育に関する応用(認知)言語学的研究

III. これまでの研究歴

これまでの簡単な研究歴については以下のリンクを参照ください(http://www.gengosf.com/dir_x/modules/wordpress/index.php?p=158)。

関連した内容の新任自己紹介を国際言語文化研究科のニューズレターL&C2号に書いたので以下に掲載します。

新任教員紹介

「仙台から名古屋へ、そして」

堀江 薫

仙台の東北大学に16年勤めたのち本年4月に本学に移籍した。出身は西日本だが、大学で東京に出てから、最初に専任の職についたのが秋田で、その後米国留学を経て仙台の大学に長くいたため、東北に縁が深くなった。仙台は「杜の都」といわれ、緑の多い自然に恵まれた都市で、冬もそれほど雪が降らず、夏はあまり暑くならず、広瀬川などの清流、山海の幸に恵まれた過ごしやすい街であった。

もともとは英語教師としてスタートしたが、米国滞在中に大学での日本語教育に携わったことがきっかけとなり、東北大では外国人留学生に対する日本語教育を行った。同時に大学院生に対して言語学の教育・研究指導を行った。大学院では16年の間に多くの修士論文、博士論文を指導した。指導学生には日本人学生、外国人留学生の両方がおり、留学生は韓国、中国、台湾、モンゴル、ニュージーランド、北米、象牙海岸(西アフリカ)など様々な国から来ていた。

最も多くの大学院生を指導した研究分野は、(I)「対照言語学」「言語類型論」、ついで(II)「第二言語習得」「外国語教育」であり、日本語と、韓国語、中国語、モンゴル語、英語、アジュクル語(象牙海岸)等との対照研究や、これらの外国語を母語とする学習者の日本語習得に関する多くの修士論文、博士論文を指導した。この16年の間に、Complementation: Cognitive and Functional Perspectives (2000年, John Benjamins)、Cognitive-Functional Linguistics in an East Asian Context(2001年, くろしお出版)、『対照言語学の新展開』(2004年, ひつじ書房)、『言語・脳・認知の科学と外国語教育』(2009年, ひつじ書房)という4冊の編著、そして『言語のタイポロジー‐認知類型論のアプローチ‐』(2009年, 研究社)という著書を出版できたのは幸いであった。これらの著作は、16年間にわたって大学院生に対して行ってきた講義や研究指導を直接間接に反映している。

東北大時代、博士課程において特に心を砕いたことは、博士論文を完成できるポテンシャルを持つ学生をよく選んで受け入れるように心がけたことであった。博士課程で受け入れた学生がその後博士論文を書き終えることができず退学するという事態は不幸なことであるため、何としても避けたかったからである。その結果、幸い、自分が主指導教員として博士課程で指導した学生の9割以上が博士号を取得し、そのうち9割近くが3年(あるいは3年以内)で修了できた。

特に自負していることは、これらの博士号取得者の多くが日本国内で、あるいは母国に帰って大学の専任教員になっていることである。しかし、2004年ごろをピークとして、景気の悪化の影響で、徐々に大学教員の公募において「専任」の代わりに「任期制」というポストが多くなってきた。この状況は、いまでも続いており、大学専任教員を目指す学生にとっては非常に厳しい時代である。「高学歴ワーキングプア」などという身も蓋もない造語が跋扈(ばっこ)する所以である。

このような時代には、大学教員は大学院の「入口」だけでなく「出口」にも十分な注意を向ける必要がある。殊に博士課程においては、どのような学生を受け入れ、どのような研究指導を行い、どのような業績をあげさせてしかるべき期間内に博士論文を書いて卒業させ(さらに就職させ)ることができるか、という点について指導教員の眼力、指導力が問われている。

さて、この4月より本研究科の日本言語文化専攻の応用言語学講座に着任した。「応用言語学」という名称は、「理論言語学」に対置され、(外国語を含む)言語の教育や習得を研究対象とする学問分野を指す。本講座では、私自身を含めた所属教員が全員外国語(英語あるいは仏語)を教えており、多くの講座の学生の関心が第二言語としての日本語の習得・教育に関わるものであることから、名は体を表す、という点でこの講座名は悪くないと考える。

ただ、「日本言語文化」専攻の言語系講座の中で、「応用言語学」は唯一「日本語」という語を冠していない講座名である。このため、他の言語系講座(とりわけ日本語教育学講座)とどのように異なっているのかが、応募する学生にとって分かりにくいのではないかと思われる。このような分かりにくさも、可能であればこれから解消していきたい。

これから、と言ったが自分が退職するまでにそれほど時間があるわけではない。本学で何ができるか、できないかを数年のうちに見極めたい。そして、研究意欲・能力のある学生を受け入れ、これまで明らかになっていない興味深い現象や法則性を学生が発見・分析し、学会発表を行い、論文にしていくプロセスに伴走できる体制を本学でも少しでも早く確立したいものである。

(日本言語文化専攻・応用言語学講座教授)